特定建築物定期調査とは?対象の建物や3年に1回など頻度の違いも解説

「特定建築物定期調査」という言葉をご存じでしょうか?建物を所有したり管理したりする方であれば、一度は耳にしたことがあるかもしれません。

しかし詳細やなぜ必要なのかをしっかり理解している方は、意外と少ないのではないでしょうか。

多くの人が利用する建物の定期点検を怠ると、思わぬトラブルを引き起こしかねません。

本記事では、「特定建築物定期調査」がどのようなものなのか、対象となる建物や点検の内容、そして3年に1回という頻度について詳しく解説します。

安全な建物を維持するために、重要なポイントを確認していきましょう。

特定建築物定期調査とは?概要や目的を解説

はじめに特定建築物定期調査とはどのようなものなのか、概要や調査の目的を解説します。何となく把握している、ではなく、きちんと基本的な情報を覚えておきましょう。

建築基準法第12条に定められた建物の安全点検のこと

特定建築物定期調査は、建築基準法第12条に基づいて義務付けられている建物の安全点検です。

この法律は、一定の規模や用途を持つ建物の安全性を定期的に確認するために設けられました。決められた特定の用途に使用され、多くの人が日常的に利用する建物が調査の対象です。

調査は、一級建築士や二級建築士、建築物調査員などの建築に関する資格を持つ専門家が行います。

この定期調査は、以下の2つの検査と一緒に実施されるも多く「定期報告12条点検」とも呼ばれています。

<特定建築物定期調査以外の12条点検の内容>

  • 建築設備定期検査
  • 防火設備定期検査

他に「昇降機定期検査」も定期報告に含まれます。

建物の老朽化や設備の故障を早期発見するのが目的

特定建築物定期調査の目的は、建物の老朽化や設備の劣化、不具合を早期に発見し、危険な状況を未然に防ぐことです。

定期調査を行うことで建物の安全性を維持し、日常的に使用する人々が安心して過ごせます。

たとえば地震や台風などの自然災害が発生した際、老朽化した建物や設備が放置されていると重大な被害を引き起こす可能性があります。

定期的に調査を行い問題を早期に発見し対処することで、建物損壊などの被害を未然に防ぐのが重要です。

調査結果は特定行政庁に報告するのが義務

調査完了後の調査結果は所在地を管轄する特定行政庁に報告する義務があります。報告書には、以下の情報が含まれます。

  • 建物の基本情報(所在地、用途、規模、構造など)
  • 調査を実施した建築物調査員、または建築士の情報
  • 調査結果の詳細(各調査項目の状態、指摘事項)
  • 改善が必要な箇所とその改善内容 など

この報告を通じて、行政機関は建物の安全性を把握し、必要に応じて修繕や改善を指導することができます。

特定建築物定期調査の対象になる建築物

ここからは特定建築物定期調査の対象になる建築物について、詳しく解説します。

公共性が高く、一定の規模や階数などの条件を満たす建物が対象

特定建築物定期調査の対象となる建物は、主に多くの人々が利用する公共性の高い場所です。

また規模や階数、用途などによって、調査の必要性が判断されます。具体的には、次のような建物が対象となります。

<特定建築物定期調査の対象建築物>

  • 劇場、映画館、演芸場
  • 観覧場、公会堂、集会場
  • 旅館、ホテル
  • 百貨店、マーケット、物品販売店舗
  • 病院、診療所(患者の収容施設があるもの)
  • 学校、学校に附属する体育館
  • 博物館、美術館、図書館
  • スポーツ施設(ボーリング場、スキー場、水泳場など)
  • 共同住宅、寄宿舎
  • 事務所 など

特定建築物定期調査の内容

ここからは、具体的な特定建築物定期調査の内容を確認していきましょう。

特定建築物定期調査では、建物全体の状態を細かくチェックします。調査内容は多岐にわたり、外部から内部まですべての設備や構造が対象です。

敷地および地盤

建物が建っている敷地や地盤の状態は重要なチェックポイントです。具体的には以下の点が確認されます。

  • 地盤の沈下や傾斜の有無
  • 敷地の排水状況
  • 塀の安全性確認
  • 擁壁の状態チェック など

建築物の外部

以下のような、建物外部の構造や設備の状態も入念にチェックされます。

  • 基礎のひび割れや欠損の確認
  • 躯体・外壁の剥離やひび割れのチェック
  • 窓やサッシの腐食や作動確認
  • 外部設置物(広告板、室外機など)の固定状態確認 など

屋上および屋根

屋上や屋根は風雨にさらされるため、劣化が進みやすい部分です。損傷していないか念入りにチェックします。

  • 屋上本体のひび割れや反り返りの確認
  • パラペットなどの立ち上がり面の劣化チェック
  • 屋根の損傷や欠損の有無確認
  • 屋上設置物(冷却塔、広告塔など)の固定部分チェック など

建築物の内部

もちろん建物の内部も重要な調査対象です。特に、万が一の災害時に被害が拡大しないように、防火設備や避難経路の安全確認が重視されます。

  • 防火区画の基準適合確認
  • 壁、床、天井の劣化や損傷チェック
  • 防火設備の作動確認
  • 採光・換気状況の確認
  • 建築材料(アスベストなど)の状態チェック など

避難施設など

災害時に避難できない事態になると大変ですので、避難経路や設備の安全性の確認も重要です。

  • 通路や出入口の幅員確認
  • 階段の状態チェック
  • バルコニーの安全性確認
  • 排煙設備の作動確認 など

特定建築物定期調査の頻度は3年に1回?

ここからは、特定建築物定期調査はどのくらいの頻度で行う必要があるのかを詳しく紹介します。

頻度は原則3年に1回

特定建築物定期調査は、原則として3年に1回行われます。

これは建物の状態が急激に悪化することを防ぎ、定期的に点検することで安全性を維持するための最低限の頻度です。

地域や建物の規模により頻度は異なる

ただし地域の特性や建物の規模によっては、3年よりも頻繁に調査を行うこともあります。

例えば地震や台風の多い地域では、建物へのダメージが発生しやすいため、より短いスパンでの調査が推奨されることがあります。

頻度については、所在地を管轄する特定行政庁の指示に従って行うようにしましょう。

特定建築物定期調査の流れと必要な準備を解説

最後に、特定建築物定期調査を行う際の流れや必要書類を詳しく確認しましょう。進める際に慌てないように、事前準備をしっかり行うのが大切です。

調査の流れ

特定建築物定期調査は以下の手順で行われます。

  1. 調査の準備:まずは必要な書類を揃え、調査のスケジュールを確認します。
  2. 現地調査の実施:調査専門家が現地に赴き、建物の各部位を詳細に点検します。
  3. 調査結果の分析:調査が終わったらデータを分析し、建物の安全性や必要な改善点を特定します。
  4. 報告書の作成:調査結果をもとに報告書を作成します。
  5. 特定行政庁への提出:完成した報告書書類を特定行政庁へ提出します。

提出報告書をチェック

特定建築物定期調査は、以下の書類構成が基本となります。

  • 定期調査報告書(規則第36号の2様式):調査全体の結果をまとめた報告書です。
  • 調査結果表、調査結果図、関係写真:調査で確認した各項目の結果を添付します。これらの記載事項には厳密な基準があり、正確な情報が求められます。
  • 付近見取図、配置図、各階平面図:建物の位置や構造を示す図面が必要です。
  • 関係写真:要是正箇所の状況写真

これらの書類は通常2部提出する必要があります。また、建物の状況に変更があった場合は別途届出が求められることもあります。また、特定行政庁によっては調査資格者の証明書の写しや委任状の添付を求められる場合もあります。

特定行政庁によって異なる点もあるため、事前に管轄の行政機関に確認するのがおすすめです。

特定建築物定期調査を適切に行い、建物の安全性を維持しましょう

本記事では特定建築物定期調査について、詳しく解説しました。

特定建築物定期調査は、建物の安全性を維持し、利用者が安心して利用するために欠かせない制度です。

定期的な点検を怠らず法的な義務を果たすことが、長期的な建物の維持管理にもつながります。

決められた頻度を守り、正しく定期調査を行うようにしましょう。

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