住宅の価値を判断するために最も重要な要素の一つである「ホームインスペクション」。しかし、「ホームインスペクションを実施する理由が分からない」と悩む人は多いのではないでしょうか?
ホームインスペクションの費用を無駄にしないためには、いくつかのポイントやコツをつかむことが大切です。
この記事では、40年以上の長きに渡りさまざまな建物に携わってきたテックビルケアが、ホームインスペクションのメリット・デメリット、注意点などを分かりやすく解説します。
ホームインスペクションは無駄にならない
ホームインスペクションは、住宅購入や不動産取引の観点から見て、決して無駄にはなりません。建築物はさまざまな要因で異常が現れるため、住宅の価値を維持するためにはプロの診断が必須です。
例えば、下記のような要因で住宅の価値は変わります。
・建築物の傾斜
・有害物質の有無
・床下の害虫の有無
・気象の変化
・地域の人口
・地質、地盤の変化
・周辺地域の自然災害の危険性
上記の要素は、建築に関わらない人々にとっては見えにくいポイントです。住宅の価値を安定させる手段として、ホームインスペクションは無駄ではありません。
ホームインスペクションが無駄といわれてしまう理由
ホームインスペクションが無駄といわれてしまう理由は、大きく分けて2つあります。
・ホームインスペクションの知識・経験がない不動産業者が思い込みで買主側に説明するため
・ホームインスペクションの調査結果次第で取引不成立になることを恐れるため
順番に確かめていきましょう。
ホームインスペクションの知識・経験がない不動産業者が思い込みで買主側に説明するため
ホームインスペクションが必要ないといわれてしまうのは、知識・経験がない不動産業者が思い込みで買主側に説明するためです。
日本でホームインスペクションが本格的に導入され始めたのは2000年代からであり、ノウハウが蓄積されているとは言い難い状況です。知見が浅い不動産業者に相談してしまうと、マイナスな印象の会話になってしまうかもしれません。
国土交通省の調査によると、ホームインスペクションの技術者の約7割が、制度を周知できていないと感じています。ホームインスペクション自体を周知し切れていないのが現状です。
ホームインスペクションの調査結果次第で取引不成立になることを恐れるため
売主側や不動産業者は、ホームインスペクションの調査で取引不成立になることを恐れるため、ホームインスペクションを避けがちです。
稀ではありますが、意図的に誤った情報を顧客に伝え、ホームインスペクションを実施しない方向に誘導することもあります。実際、住宅購入後の不具合発見によるトラブルが発生しています。
住宅のトラブルを避けるためにも、ホームインスペクションを拒否する売主との手続きは、慎重な心構えで臨みましょう。
ホームインスペクションは無駄といわれた場合の3つの対応策
ホームインスペクションは無駄といわれた場合の対応策を、3つ解説します。
・告知の義務があり、重要であることを伝えて交渉する
・買主側の権利であることを伝えホームインスペクションを交渉する
・ホームインスペクションができなければ購入しないという強い意志を示す
一つずつ押さえていきましょう。
告知の義務があり、重要であることを伝えて交渉する
2018年4月に宅地建物取引業法が改正され、買主側にはホームインスペクションについて売主に告知する義務が科されています。ただし、あくまで説明の義務化であり、ホームインスペクションの実施自体は義務化されていません。
不動産売買の商談中に買主側からホームインスペクションの説明がなければ、瑕疵ありの住宅である可能性があります。経年劣化の可能性が大きい中古住宅ほど、異常発見のためのホームインスペクションは重要です。不動産売買の際にホームインスペクションの話題が出なければ、積極的に重要性を伝えて交渉しましょう。
買主側の権利であることを伝えホームインスペクションを交渉する
ホームインスペクションは買主側の権利であると、はっきり主張して交渉しましょう。購入する住宅の安全性を確認したいという思いは、何もおかしくありません。早く売り買いしたい方もいますが、購入後に後悔しないためにも、ホームインスペクションは必須です。
ホームインスペクションができなければ購入しないという強い意志を示す
売主や不動産会社が消極的な場合は、ホームインスペクションなしでは購入しないと断言しましょう。売主側にとって、ホームインスペクションを避けるという印象悪化は避けたいものです。契約前にホームインスペクションはできないと拒否するならば、住宅購入後にトラブル発生の可能性があるといえます。
ホームインスペクションのメリット
ホームインスペクションには2つのメリットがあります。
・安心して不動産売買ができる
・トラブル発生のリスクを下げる
それぞれの特徴を把握し、ホームインスペクションで安全な住宅を手に入れましょう。
安心して不動産売買ができる
ホームインスペクションを実施すれば、住宅の不具合の発見につながり、物件の価値を正確に把握しやすくなります。不動産売買も安心して進めやすくなるでしょう。
実際、ホームインスペクションを実施した住宅の売買において、買主の住宅購入の意思決定が早くなっているデータがあります。具体的な成約期間の差は下記のとおりです。
ちなみに、「あきの家づくり」の記事「【極寒を凌ぐ】高気密高断熱住宅が得意なハウスメーカー5選!選び方や工夫したい設備も解説」では、高気密高断熱の家を選ぶコツや、おすすめのハウスメーカーについて詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
<ホームインスペクション実施済と未実施の1週間未満の成約割合比較表>
建造物種 | 成約決定の割合 | |
戸建 | 済(617件) | 25.3% |
未(326件) | 8.1% | |
マンション | 済(345件) | 18.4% |
未(445件) | 8.6% |
参考:「既存住宅状況調査、既存住宅瑕疵保険関係資料」(国土交通省)
ホームインスペクション実施者は、1週間未満の成約決定の割合が2倍から3倍ほど増加しています。ホームインスペクションによる安心感で、円滑な不動産売買が行われているようです。
トラブル発生のリスクを下げる
ホームインスペクションによって、不動産売買のトラブルが発生するリスクを下げられます。事前にホームインスペクションを実施していれば、買主からの損害賠償が発生する可能性を抑えられるでしょう。
実際、ホームインスペクション未実施の住宅契約後に雨漏りなどの不具合が発見され、売主や宅建業者に損害賠償を求めるトラブルが発生しています。住宅の売買でトラブルを避けるためにも、ホームインスペクションは重要です。
ホームインスペクションのデメリット
ホームインスペクションにはデメリットが2つあります。
・必ず瑕疵が見つかるわけではない
・費用がかかる
詳しくチェックしていきましょう。
必ず瑕疵が見つかるわけではない
ホームインスペクションでは、必ず瑕疵が見つかるわけではありません。ホームインスペクションで確認するのは、劣化している箇所の有無です。住宅が劣化している原因を突き止めることはできません。
瑕疵が発見されるケースに備えて、住宅売買瑕疵保険への加入をおすすめします。この保険は、住宅購入から一定年数の間に瑕疵が発見された場合、瑕疵の対応費用を負担してもらえる制度です。売主や買主、ホームインスペクションの担当業者にそれぞれ補填されます。
ホームインスペクションにさらなる安心感を加えるためにも、住宅瑕疵保険に加入しておきましょう。
費用がかかる
ホームインスペクションの費用に不満を訴える意見もあります。ホームインスペクションの具体的な料金の目安は下記のとおりです。
・戸建住宅:60,500円~93,500円(税込)
・共同住宅:49,500円~66,000円(税込)
上記の料金はオプションを含まない基本料金です。費用を気にする声もありますが、購入者とのトラブルが発生すれば、売主や不動産会社の信頼は損なわれます。
ホームインスペクションを実施する際の3つのポイント
ホームインスペクションを実施する際のポイントを3つ解説します。
・第三者機関のインスペクターに依頼する
・実績や実力が確かな業者に依頼する
・診断の対象範囲をあらかじめ確認する
トラブルを避けるためにも、上記のポイントをお伝えします。
第三者機関のインスペクターに依頼する
ホームインスペクションは、第三者機関のインスペクターに依頼しましょう。不動産会社やリフォーム業者が選んだインスペクターは、第三者性を保っていないかもしれません。住宅の価値を正確に判断してもらうためには、客観的な立場を保てるインスペクターに買主側が依頼するのが鉄則です。
例えば、国土交通省が実施している既存住宅状況調査技術者講習制度の合格者は、中立の立場で的確に調査します。不動産売買の際は、あらかじめ第三者期間のインスペクターを探しておきましょう。
実績や実力が確かな業者に依頼する
ホームインスペクションは、実績や実力が確かな業者に依頼しましょう。ホームインスペクションの施工主と売主に利害関係があると、施工結果が偏る、もしくは不正や改ざんが発生する可能性もあります。そのため買主側に不都合とならないよう、客観的な調査ができる第三者機関に依頼すると安心です。
診断の対象範囲をあらかじめ確認する
ホームインスペクションを依頼する際は、診断の対象範囲をあらかじめ確認しておきましょう。ホームインスペクションの確認項目は、業者によって差があります。事前に「床下や屋根裏などまで調べてくれるのか」「別料金などが必要か」などの点を、チェックしておかなければなりません。
例えば、テックビルケアでは以下の項目を確認しています。
・屋内の床や壁など
・トイレや洗面所など
・害虫やアスベストなど
・基礎や柱などの構造体
・屋外の屋根や外壁など
ホームインスペクションに関するよくある質問
ここからは、ホームインスペクションに関するよくある質問にお答えします。
ホームインスペクションは新築の場合でも必要?
ホームインスペクションは新築・中古住宅を問わず、重要な役割を果たします。新築住宅でも完璧に建てられている保証はありません。断熱材や配管の不具合は目視で簡単には発見できず、さまざまな問題が隠れています。
実際に、新築住宅に5年保証の防虫・防蟻対策が施されていたにもかかわらず、害虫が発生していた事例があります。住宅に異常が発見された場合でも、施工会社が非を認めるとは限りません。法的な手続きや賠償請求に、膨大な時間がかかってしまうでしょう。ホームインスペクションは新築住宅でも重要です。
ホームインスペクションはそもそも義務?
ホームインスペクション自体は義務ではありません。売主側からのホームインスペクションに関する説明が義務であり、実施自体は買主側の判断に任されています。
しかし、ホームインスペクション未実施の住宅購入後に瑕疵が発見され、損害賠償を請求した事例があります。長く安心して暮らすためにも、ホームインスペクションを実施しましょう。
ホームインスペクションは売主側、買主側どちらが負担する?
売主か買主のどちらが負担するかは定められていません。買主が費用を負担して売主に依頼し、ホームインスペクションを実施する傾向があります。
売主側がホームインスペクション実施済の物件を紹介してくれるのならば、高い信頼性のある売主といえるでしょう。ただし、売主側とインスペクターが「瑕疵を隠ぺいしているかもしれない」という視点を持っておきましょう。可能であれば、第三者のインスペクターによる施工かどうか確認できると安心です。
ホームインスペクションは無駄ではなく安心を得るための大切なもの
売主との関係悪化を不安に思い、気になる住宅購入を諦めたくない方は、ホームインスペクションを負担に感じてしまうでしょう。しかし、ホームインスペクションは決して無駄な工程ではありません。
シロアリ対策の充足度や地盤の状態などは、判断が難しい要素です。必ず瑕疵を発見できるとは限りませんが、住宅の不具合の有無を確認しやすくなります。
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